質問箱「能の泉」第11回
問能の伝統は今日までどう守られて来ましたか?答江戸式楽の伝統を色濃く残す宝生流を例にお答えしましょう。まず台本ですが、宝生では観世の謡本を直して用い、寛政時代にようやく自前の謡本を刊行、その後嘉永、明治、大正と増刷、昭和に入って読み易いよう...
質問箱「能の泉」第10回
問能面の意味を教えて下さい。答太古に興った呪術の面が、我が国のみ洗練に洗練を重ね、能面に姿を変えて今日に伝わりました。能草創期には面(おもて)の種類も少なかったようですが、室町以降曲柄に応じ年齢、性格、品位の異なる種々の面が創作改作され、人...
質問箱「能の泉」第9回
問なぜ能の動作はゆっくりなのですか?答以前能のテレビ番組を見ていた三歳三ヶ月の息子から「お父さま、どうして能はゆっくりなんですか」と質問されたことがありました。能の動作は、曲や場面で速いのも遅いのもあるのですが、芝居歌舞伎に比すれば確かに緩...
質問箱「能の泉」第8回
問能とオペラは歌う劇という点で似通っていますが、配役の仕方に違いはありますか?答大いに御座います。先ずオペラは男の役は男が演じ女の役は女が演じますが、能は男だけで演じる芸能として磨き抜かれて来たものなので、原則男の役も女の役もすべて男が演じ...
質問箱「能の泉」第6回
問舞台で待機している役者が袴の中に手を突っ込んでいるのは、不用心で武家の作法に反しませんか?答この問題についてはまともに反論している文献をついぞ見たことがありません。そこで筆者の研究に基づく仮説を提示して反論と致します。即ち、「袴に手を入れ...
質問箱「能の泉」第5回
問仕舞用の袴は普通の馬乗り袴とどう違うのですか?答仕舞袴は、羽織袴役以上の上級武士の礼装即ち裃の袴が起源と考えられ、主な特色として、襠(股部)が低く相引き(脇部)の丈も短く腰板の芯には厚紙でなく桐や杉の板を入れる点などが上げられます。また、...
質問箱「能の泉」第4回
問宝生流に家元が二人いるのは何故ですか?答能はシテ方、ワキ方、狂言方、大鼓方、小鼓方、笛方、太鼓方の分業制になっておりまして、それぞれにいくつかの流儀が存在します。そして江戸時代には、座付きといってシテ方以外の流儀は観世、宝生、金春、金剛、...
質問箱「能の泉」第3回
問能の演目はどれくらいありますか?答能の曲は文献に残っているものだけで二五○○番を超えるといわれます。しかし今も実際に舞台にかけられている曲は、その一割ほどにすぎません。幕府へ提出した書上や宗家公認の謡本等から各流儀の公定演目をさぐってみる...
質問箱「能の泉」第2回
問織田信長が「人生五十年」と謡って舞う場面がドラマや小説によく出て来ますが、あれは能ですか?答よく聞かれる質問ですが、答えはノウです。能の遠戚みたいなものと言いましょうか、幸若舞の「敦盛」という曲の一節で、能とは同名異曲です。今の能は、大和...
質問箱「能の泉」第1回
はじめにこれから回答者を務めさせて頂く土蜘(つちぐも)こと村上です。皆様から寄せられた様々な質問にお答え致します。独断と偏見を交えた迷解答を投げかけて、皆様の五体をつづめ身を苦しむるやも知れません。回答に対する御意見御批判もどしどしお寄せ下...