質問箱「能の泉」第1回

能の泉

はじめに
これから回答者を務めさせて頂く土蜘(つちぐも)こと村上です。皆様から寄せられた様々な質問にお答え致します。独断と偏見を交えた迷解答を投げかけて、皆様の五体をつづめ身を苦しむるやも知れません。回答に対する御意見御批判もどしどしお寄せ下さい。

さて日本文化を知り日本精神を学ぶのには何が手っ取り早くて確実でしょうか。

それは能であります。

明治の始め日本文化の保護と紹介に力を尽くしたフェノロサも、明治の三名人と言われた梅若実について謡曲の勉強をしました。私のところに謡曲を習いに来ていたアメリカ人留学生も、その動機を尋ねたら「日本文化を知るには能が一番だと思ったから」だそうです。

仙フィルのコンサートマスターだったSさんは、「アメリカに留学していた時、様々な国から来ていたクラスメイト達が自国の歴史や文化を誇らしげに語るのに、自分はヴァイオリンしか知らなくてとても恥ずかしい思いをした」と話してくれました。もしその時Sさんが着物を着て謡を口ずさみ仕舞を舞って見せていたら、きっといっぺんに注目と尊敬を集めたことでしょう。

日本文化の素晴らしいところは、高貴なところから下々に至るまで、絵を描いたり歌を詠んだり謡ったり楽器を奏したりお茶や生け花を楽しんだりと、自ら芸術を嗜んで来たところにあります。それに対し西洋の王侯貴族は、芸術は専門家にやらせ、自ら嗜むのは狩りとダンスくらいだったのだそうです。

伝統芸能の宝庫とも言うべき金沢を訪ねた折、その担い手である芸者さん達が能役者を尊敬しているという話を聞きました。それは能が日本の伝統芸術の頂点に立つことを認められていることの表れに違いありません。すべからく能にふれて、日本人に生まれたことの悦びを味わって欲しいと思います。

(副会長 宝生流 村上良信)

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