質問箱「能の泉」第7回

能の泉

能の鑑賞方法を教えてください。

知性と教養面から説くことも可能ですが、まずは理屈抜きで感受性で鑑賞することをお勧めします。

仮に「東北」という曲で説明しましょう。東北はトウホクではなくトウボクと濁って読みます。
京の鬼門を守る東北院に立ち寄った旅の僧(ワキ)が、院内の梅を眺めていると、里の女に声をかけられます。この梅はこの寺が上東門院(藤原彰子)の御所だった頃に和泉式部が植えたもので、この方丈は和泉式部の休み所だったと語り、花の縁で読経するように勧め、自分こそは花の主よと告げて消え失せます。

土地の人(アイ)に詳しいいわれを聞き、勧められるままに読経をしているところへ、成仏した和泉式部の霊が姿を現し、自作の歌を思い起こして和歌の徳をたたえ、往事の東北院の賑わいぶりを示す舞を舞いつつ方丈に入って行ったと見えたところで層の夢は覚めたのでした・・・という曲です。

ほとんど物語になっていない夢と幻のお話で、こういう能を夢幻能と言います。能には芝居のような劇的ストーリーの曲もありますが、多くは夢と幻の内に舞を見せる曲です。前後の筋は舞に必然性を付加するためにあるといった感じのものです。ですから筋がどうのと頭で考えるよりも頭の中をさらして、ハートで何かを感じて欲しいのです。

平安時代の雅やかな女性の美しさ、梅の花の満開の景色、梅の香り、成仏した女性の清々しさ神々しさ等々イメージできれば上々です。能特有の簡素化された所作と七五調の歌詞にちりばめられた様々なキーワードがイメージ化を助けてくれます。文句をそらんじ言葉の意味を理解している人ほど有利とも言えますが、たとい言葉を聞き取れず意味も解せずとも、演者の思いを以心伝心で受けることは可能です。それは、西洋のオペラを字幕なしでも鑑賞できるのと同じことです。

(副会長 宝生流 村上良信)

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